Artist Statement in Japanese

日本では、個性的な女性であるよりも周囲に溶け込み協調性を重んじる、団体意識の強い社会の中で育ちました。その後、個人主義そして多国民族文化の色濃いアメリカに渡る機会を得て、自分の事をよく知らない自分を発見。様々な出逢いを通して、自我の個性と存在を認識できるようになりました。この過程で、「私達の幸福と調和の取れた人生は、個人の違いを受け入れ合い、日頃より善良な心と思想を分かち合うことによって得られるのではないか」と強く感じるようになりました。我々は日常、気付かぬうちに様々な人と文化の交わる中で影響されあって生きています。そのことを作品の中に描いてゆけたらと思っています。

歴史上、多くの文明が金箔を絵画に用いてきました。日本にも金箔画は中国から韓国を通して、仏教画の伝来と共に伝わりました。16世紀には、特に庶民文化において金箔画の独特な技法と様式が発達しました。その様式を私は作品の中に取り入れています。作品の行程は、現代作家としてまずコンピューターで下絵を構成し、厚めの水彩紙に図柄をインクジェットプリントで印刷をします。その上に金箔や洋箔を押し、アクリルや水彩絵の具、墨、色鉛筆などで、細部や色の最終的な調節を入念に施します。

作品の中には、古今日米の大衆文化を象徴する絵やポップカルチャーのキャラクターなどを取り合わせています。これらの画像の組み合わせにより、二つの文化の歴史そして私の体験している世界を、パロディや社会風刺もふまえて表現しています。

気が付けば渡米16年となりました。しかし、アメリカの生活習慣や言語、文化の違いには、まだまだ新しい出会いや苦労が沢山あります。異境で暮しながら感じる思いや体験などを、作品を通して表現してゆければと思います。また世界のグローバル化が急速に進む中、異文化同士の壁や不安にユーモアと美的センスをもって取り組み、国境や海をも越えた理解と友情の会話のきっかけに、少しでも貢献してゆくことができれば幸いであります。

2008年 春